バイク その2 ちょい乗り
初夏。
砂浜で見つけた光る石のような素敵な季節ですね。
バイクに乗っていて、Tシャツに短パン、グローブなしで気持ちよさそうにバイクに乗っている人を見かるようになりました。
大抵は若い男性(たまに女性)で、ビッグスクーターに、悠然と乗っている人が多いです。
それを見て僕は、「ああ、、、気持ちよさそうだなあ」と思いうらやましくなり、同時に「すごいなあ、でも、危ないなあ」と自分のことのように心配します。
しかしそういう格好で乗っている人は例外なく運転が上手く、なんなら片手で颯爽と走っています。
乗りなれてもいるのでしょう、混んだ道もスイスイ、ひらひらと車の間をすり抜けていきます。なんと、タンデム(二人乗り)の人たちもいます。
僕は、50歳を過ぎてから中型免許を取ったのでまだ日も浅いですし、第一、運転の技量が未熟ですから、とてもそんな芸当は怖くてできません。
車の間のすり抜けも一切、しません。どれだけ混んでいても、車と一緒に律儀に待ちます。
と偉そうにはいうものの、考えてみたら僕も高校生のころはバイク(原付ですが)をノーヘルで(その頃はまだ規制はありませんでした)ぐいんぐいんと乗り回していました。今思えばずいぶん危ない乗り方もしていましたし、そのまま中免を取って乗り続けていたら、もしかしたら大けがをしていたかもしれません。
車もそうですが、バイクは危ない乗り物です。
バイクは2輪なので、自立しません。
僕たちはそんなバイクに、むき出しの生身で跨っています。
そして車と同じ(あるいはそれ以上)のスピードで走ります。
昔、原付に乗っていたころも、ひやっとしたことは多々ありますし、よそ見をしていて軽トラに後ろから突っ込んだこともあります。(幸運にもハンドルから手を離さなかったので飛ばされることはありませんでした。軽トラの荷台でかなり強く胸を打ち、シャツはびりびりになり胸ポケットの眼鏡がぐしゃぐしゃに壊れましたが、僕自身はほとんど無傷でした。眼鏡が助けてくれたのだと思います)
ですので、バイクで遠出をするときは、今はきちんと装備をして臨みます。もちろんジャケットとパンツは、夏用、冬用ともプロテクター付きですし、プロテクターなしの革ジャンで乗りたいときは、『ヒットエアー』という、バイク用エアバッグを装着しています。これは、エアタンクを内蔵したベストで、ジャケットとバイクを伸縮するリールでつなぎ、バイクと体が離れたらエアバッグが作動、首、胸、背中を守るというもので、安心感があります。
もちろん、グローブやシューズもバイク専用で、体のあらゆる関節をプロテクトします。
服の下につけるインナープロテクターや、普段着のズボンの上から付けるニー(膝)プロテクターも持っています。
装備にかかる費用は馬鹿になりませんが、安全と安心には代えられません。
でもー。
やっぱりTシャツでバイクに乗りたい、と思うのです。
こんな季節こそ。
せめて、こんな季節くらい、昔のようにー。
分厚い手袋もなく、普段の靴でさりげなくー。
バイクは、素晴らしい乗り物です。
バイクとは、強い一体感があります。信号で止まると、思わずガソリンタンクを抱きしめたくなるほど、僕は自分のバイクが好きです。
昔から西部劇の映画が好きなせいもあるでしょうが、アメリカの荒野で巧みに馬を乗りこなすのは、こういう感覚だろうか、とか思ったりします。
なので僕は、Ninja(僕のバイク、KAWASAKI Ninja400)を、ツーリングだけでなく、普段使いでも乗るようにしました。
銀行、スタバ、スーパーマーケット。
そんな、近場への日常の用を足すとき、バイクでバイクで出かけることにしました。Tシャツで、ノーグローブで。
(さすがに、ノーヘルとはいきませんが)
財布と携帯だけを持ち、バイクに跨ろう。昔のジェンマ(スズキの原付バイク。高校時代の僕のバイク)のように。
5月の日曜日。Tシャツでスーパーに行きました。
ありふれた買い物を済ませ、しばらく走りました。
素手でハンドルを握った感覚は、言葉で言い表せません。
そして体に受けた5月の風が、僕の頭の中に脳内麻薬があふれさせました。
ーーーーーーー最高。
楽しーっ
と僕は、思わず、叫んでいました。
May,31,2021