トップレフト(黒木亮さん、金融小説)
爽快感ー★★★ プロフェッショナル度ー★★★★ 泣けるー★ 高揚感ー★★★★ ハッピー感ーー
重い、考えさせられるー★★ ハマり度ー★★★
『トップレフトとはー 主に金融業界において、融資や証券引受における主幹事または主幹事の中でも最も出資額や引受額が多い金融機関を意味する業界用語。出した額の多い金融機関の名前が目論見書などの書類において一番上の一番左に書かれることが多いためこのように呼ばれるようになった。「トップレフト」を勝ち取ることは大きな名誉とされている。(出典/Weblio辞書)』
『トップレフトーウォール街の鷲を撃て』、黒木亮さんの金融小説、そして黒木さんのデビュー作です。
大手邦銀や外資金融機関、商社などを経験された黒木さんの金融小説はプロフェッショナル性が高く内容に重厚感がありますが、ストーリーにメリハリが効いているため読み始めると止まらなくなり、読みごたえがあるので僕は大好きです。金融や外国とのビジネスに関係する方やそれらに興味がある方、ビジネスマンの方には、まず間違いなく面白いです。
この小説には、3人の主人公が登場します。大手邦銀である富国銀行ロンドン支店の次長・今西と、富国銀行を去り米系インベストメントバンク(投資銀行)に身を投じたモルガン・ドレクスラーの龍花。誠心誠意仕事に打ち込む今西と、儲けを第一主義として世界の荒々しい金融市場の荒波を勝ち抜いてきた龍花。そんな対照的な二人に巨額のシンジケートローン案件が持ち上がります。巨大融資の主幹事(トップレフト)を獲得すべく、二人の名誉をかけた戦いが始まります。巨大な資金力と粋を尽くした金融工学に加えて手段を択ばぬ龍花に苦戦し、煮え湯を飲まされる今西。しかし、最後にもう一人の主人公が登場して…。
『日本VS欧米』の代理戦争的要素を孕んだ『邦銀』対『米系投資銀行』の戦いがテンポよく盛り上がり、作中に引き込まれるように一気に読めます。そして意外で、高揚感を味わえる結末。ストレスを抱えた大人の、そして『失われた20年』を生きたビジネスマンの、一服の清涼剤ともいえる素晴らしい小説でした。
今でも本棚の背表紙を見るたび『ああ、面白かったなあ』と思い、パラパラ拾い読みしています。
ぜひ、ご一読を。
May,3,2021